彼氏とは、疎遠になってた。
私の仕事が忙しかったせいもある。
もちろん気持ちが冷めていたことが理由としては一番大きい。
トモさんと二人で会うことは、私にとっては試験のようなもの。
「する」か「しない」かは二の次。
むしろしなくてもいい。
ふたりきりのときに、どんな気持ちになるんだろう。
やはり普通の男女みたいに求め合うんだろうか。
きっとそんなことはない。
そもそも私は既婚者に対しては、かなり高い壁を作るタイプ。
未来のない恋愛はしない。
自信があった。
でも連日送られてくる、愛が含まれたメッセージは私のその自信を軽く揺るがせてくれた。
トモさんは世間でいう「イケメン」では決してない。
本当に普通のおじさん。
少し薄くなった頭髪。中年太りの傾向が見られるお腹。地元の訛りが染み付いた会話。
そして左手薬指に輝く結婚指輪。
どれをとっても、モテるタイプではない。
私はただ、私に向けられている愛情だけで動いていた。
会う約束をドタキャンするなら今のうち。
前日まで迷っていた。
約束では駅で待ち合わせしたあと、ホテルに二人で入ることになっていた。
ホテルに入ったって、しなきゃいいじゃない。
ただそこで二人で話をして、それだけで終わってもいい。
トモさんを知る人が、私と会ってるところを見られる可能性がゼロに近い場所。
ただそれだけで場所がホテルに決まっただけ。
前日のチャットでは、二人で「緊張するねー」と、そんな会話を交わした。
この日は私の誕生日でもあった。

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